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【「こども庁」はどうなる?】「骨太の方針2021」から読み解く政府の本気度

第83回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■必要なのはスローガンではなく具体的な施策

 話は就学前の子どもに限らず、教育そのものをこども庁に統合するところまで広がっていく。教育をこども庁に統合することになれば、文科省の仕事がなくなる。つまり、文科省廃止にもつながりかねないのが、こども庁創設なのだ。文科省としては、内心穏やかでないはずだろう。そのこども庁の案が、菅政権の骨太の方針に正式に盛り込まれたのだ。
 ただし、「こども庁」という言葉は使われていない
「子供の貧困、児童虐待、重大ないじめなど子供に関する様々な課題に総合的に対応するため、年齢による切れ目や省庁間の縦割りを排し」とある。

 自民党若手議員の勉強会がこども庁を提案したときに問題としていた「縦割り」を排することは、明記してある。
 しかし、その縦割り弊害の典型として話題になっていた、幼稚園と保育園、認定こども園の権限を一元化する、つまり「幼保一元化」についての具体的な記述はない

 そして、「妊娠前から、妊娠・出産・新生児期・乳幼児期・学童期・思春期を通じ、子供の視点にたって、各ライフステージに応じて切れ目ない対応を図るとともに、就学時に格差を生じさせない等の教育と福祉の連携、子供の安全・安心の確保、データ・統計の充実等を行い、困難を抱える子供への支援等が抜け落ちることのないような体制を構築することとし」とあり、「こうした機能を有する行政組織を創設するため、早急に検討に着手する」と述べられている。

 行政組織を「創設する」と言っているのだから、それが「こども庁」であってもいいはずだ。それにも関わらず仮称としてすら具体的な名称を挙げていない
 そのことに、菅政権の腰の引けた姿勢が見える気がしないでもない。「縦割りを排し」と言いながら、幼保一元化という具体的な施策を提示していないのも、同じことかもしれない。

 具体的に語れば、影響が予想される省庁は具体的に反応してくることになる。それには具体的に応えなければならなくなる。つまり、面倒くさくなる。具体的に述べなければ、どこからも具体的な反発を受けることはない。言い逃れもできる。
 しかし、菅政権としては、具体的な予定はないものの、子どものことを考えている姿勢は見せたことにはなる。選挙になれば「子どもが第一」とアピールすることは、充分に可能である。

 このまま開催されればの話ではあるが、オリンピック・パラリンピックが終わる9月には、菅首相は解散・総選挙に打って出るとの見方が強い。新型コロナウイルス対策ではさんざん批判され、その騒動の中、五輪開催を推進したことへのマイナスイメージも小さくはない。
 そうした流れの延長線上にある選挙では苦戦を強いられる可能性が高い。だからこそ「子どものことを考えている」とアピールすることを考えているのかもしれない。

 しかし、骨太の方針で具体的なことに触れなかった菅政権は、どれほどのことを子どものためにできるのだろうか。保護者や教育関係者は、どのように評価していくのだろうか。

 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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